私はかつて、あるリゾートホテルで働いていたことがある。大変にバブリーな某流通グループが誘致した、外人スタッフが相手をしてくれる、あのクラブの隣である。
ゴルフ場とスキー場があり、渡辺貞夫氏<ナベサダ>が一度だけゴルフをしに来たことがある。
私はそこでずっと事務関係の仕事をしていたのだが「事務なんかもう飽きた。別の仕事をさせろ!」と、酒が飲めない総支配人(当時私の家の真下に住んでいた)の所へ酔っ払って押しかけた。
そのせいかどうかは分からないが、企画のポジションを与えられた。部下なし。上司二人。社長と総支配人の直属である。針の筵の上で脂汗をかきながらパソコンと向かい合う毎日だった。筑波の蝦蟇の気持がよく分かる。
それは冗談だが、小さな会社なので企画=広報という側面があって、レストランやショップの販促イベントを考えるのと同時にチラシのデザインや新聞広告の版下作り、挙げ句の果てにはレストランのグランドメニューまで完全版下に仕上げてしまう(印刷費が安く済む)なんてことをやっていた。
しかし私はミュージシャンである。せっかく企画のポジションにいるんだから、ホテル内で音楽イベントをやりたい!と総支配人と社長にぶちかました。
しかし、未だかつてそんな事を経験した者は社内に誰もいない。 三人で頭を抱え込んでしまった。
上の二人は否定的だったが、私が一人で全部やるという条件で承認を得た。孤立無援というヤツである。むろん赤字の場合の対応策もクリアした。なんせ経費予算は私が全部管理していたので、年度末のケツの(失礼!収支の)数字が合えば誰にも文句を言われる筋合いではないのだ。
そんな訳で、以前から知己であった、札幌市在住の福居良さんのピアノトリオを招いてライブを敢行したのだ。
赤字対策万全と言ったって、黒字になるにこしたことはない。
元来私は負けず嫌いである。今思い出しても自分で感心するくらい働いた。後でガタガタ言われるのがイヤなのだ。
結果は茶色。赤にも黒にもならず、トントンというところだった。
しかし、その時に学んだことがその後大いに役に立っている。
新しいことはなんでもやってみるべきだと、つくづく思う。肉体が老化するのは自然の摂理で、これに逆らう訳にはいかないが、精神的に老化することは自然の摂理ではない。その本人の生き方の問題である。